COVID-19に対するアストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンの安全性と有効性に関する中間解析
目次
はじめに
オックスフォード大学と、英国の製薬大手アストラゼネカ社が共同開発したアデノウイルスベクターワクチン(AZD1222)は、チンパンジーのカゼの原因となるアデノウイルスを、ヒトの体内で増殖しないように処理し、その中に新型コロナウイルスの表面に存在する、スパイクタンパクの遺伝子配列を組み込んだものです。
ウイルスベクターワクチンは、ここ数年で実用化された新しい技術で、過去に医薬品として承認を受けたのは、エボラウイルスに対してEUと中国がそれぞれ認可した2種類のワクチンのみです。
ワクチンがヒトの体内に接種されると、ウイルス内に組み込まれた遺伝情報をもとにスパイクタンパクが合成され、それによって新型コロナウイルスに対する免疫が誘導されます。
ファイザー社のmRNAワクチンと比較すると、超低温(-70℃)での保存が必要なく、普通の冷蔵庫で長期保存できる点が特徴です。
すでに、イギリス、EU、インド、南米諸国などの50カ国近くで承認または緊急使用が許可されているアストラゼネカのワクチンですが、日本でも2月5日に、ファイザー社のワクチンに続く2番手として承認/販売の申請が行われ、2月下旬時点では審査中の状態です。
このアストラゼネカ社のワクチンの効果と安全性に関する情報を、各国で承認の判断材料とされた、4つのランダム化試験の中間解析結果をまとめた論文から読み取ってみたいと思います。
論文が掲載されたのは、Lancet誌の2021年1月9日号です。(オンラインでは2020年12月8日に公開されました)
原文(英語)や図表は、下のリンクからお読みいただけます
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7723445/
※じっくり目を通すお時間がない方は、重要と思われる箇所を赤文字にしましたので、拾い読みなさってください。
試験デザイン
- 英国、ブラジル、南アフリカの3カ国で進行中の4つのランダム化盲検試験(COV001、COV002、COV003、COV005)のデーターから、AZD1222ワクチンの有効性と安全性に関する中間解析を行った。
- 有効性の解析については、COV002とCOV003のデーターを、安全性の解析については、4つの試験全てのデーターを評価した。
※COV001とCOV005は、COVID-19の発症者数が基準を下回ったため、有効性の解析から除外した。 - 4つの試験には小さな相違が存在したが、充分な一貫性があることから、データーを集積して解析するのがより有益であると判断した。
- COV001は、英国で2020年4月から進行中の、単盲検1/2相の臨床試験である。
18-55歳の基礎疾患がない健康なボランティアを、5×1010のウイルス粒子を含むAZD1222ワクチン、髄膜炎菌ワクチン(コントロール)のいずれかの群にランダムに割り付けた。
開始当初は1回接種の試験として計画されたが、2020年6月にブースター投与を追加した2回接種に修正された。 - COV002は、英国で2020年5月末から進行中の、単盲検2/3相の臨床試験である。
医療や社会福祉など、COVID-19のリスクが高い職種を中心に被験者の組み入れを行い、AZD1222接種者と髄膜炎菌ワクチン(コントロール)接種者に割り付けた。
試験中にプロトコルが修正されたため、18-55歳の被験者においては、AZD1222ワクチンを接種された群が、1回目の接種が低用量(ウイルス粒子2.2×1010)、2回目の接種が標準量(ウイルス粒子5×1010)で行われたLD/SDグループと、2回とも標準量が接種されたSD/SDグループの2つに分かれた。後から試験に組み込まれた56歳以上の被験者は、全てSD/SDグループとなった。
それぞれのグループとほぼ同数の被験者が、コントロールとして髄膜炎菌ワクチンを接種された。 - COV003は、ブラジルで2020年6月から進行中の、単盲検3相の臨床試験である。
医療従事者など、COVID-19へのリスクが高い人々が試験に組み入れられた。
被験者は18歳以上で、安定した基礎疾患がある人も組み入れ対象となった。
AZD1222接種群のワクチン接種量は、COV002のSD/SDグループと同じで、最大12週間(目標4週間)までの間隔で2回の接種が行われた。
コントロール群には、1回目に髄膜炎菌ワクチンが、2回目に生理食塩水が接種された。 - COV005は、南アフリカで2020年6月から進行中の、二重盲検1/2相試験である。
18-65歳のHIVに感染していない健常者を対象とした(HIV感染者も試験に組み入れられたが、今回の解析からは除外した)。
AZD1222接種群のワクチン接種量は、COV002のSD/SDグループと同じで、4週間間隔で2回の接種が行われた。
コントロール群には、生理食塩水が接種された。 - 不顕性感染を調査するため、COV002の一部の被験者には、初回のワクチン接種後1週間より、毎週自己採取した鼻咽頭拭い液を提出してもらい、核酸増幅検査を行った。
また、それぞれの試験には多くの医療従事者が参加していたため、職場の予防対策として実施された核酸増幅検査の結果も、解析に組み入れられた。 - 臨床症状(37.8℃以上の発熱、咳、息切れ、嗅覚または味覚の異常)の少なくとも1つを伴って、核酸増幅検査で陽性となったケースを症候性のCOVID-19と定義し、これに対するAZD1222の予防効果を評価した。
- ワクチン接種前の時点で抗体検査が陽性または不明だった参加者、2回目の接種から14日経過する前に核酸増幅検査が陽性になった参加者は、有効性の解析から除外した。
試験結果
有効性
- 2020年4月23日から2020年11月4日までの期間に、4つの臨床試験で23,848人が試験に参加し、ワクチンの接種を受けた。
(COV001:1,077名、COV002:10,673名、COV003:10,002名、COV005:2,096名) - COV002と、COV003の参加者のうち、11,636名が有効性の解析対象となった。
このうち5,807名がAZD1222ワクチンを2回接種され、5,829名がコントロール(髄膜炎菌ワクチンまたは生理食塩水)を接種された。 - 有効性の解析対象者11,636名のうち、87.8%が18-55歳の若年者だった。60.5%が女性、82.7%が白人、4.4%がアジア系であった。
77.8%は医療/社会福祉系の職業についていた。10.7%が心血管系の疾患を、11.7%が呼吸器系の疾患を、2.3%が糖尿病を合併していた。 - 試験中のプロトコルの修正と、ワクチン供給の問題のため、COV002のLD/SDグループでは、1回目と2回目の接種間隔の中央値が84日と長くなった。
COV002のSD/SDグループでは、接種間隔の中央値は69日(50-86日)であった。
COV003では、接種間隔の中央値は36日(32-58日)であった。
COV002 LD/SD | COV002 SD/SD | COV003 | 合計 | |
AZD1222 | 1,367名 | 2,377名 | 2,063名 | 5,807名 |
コントロール | 1,374名 | 2,430名 | 2,025名 | 5,829名 |
合計 | 2,741名 | 4,807名 | 4,088名 | 11,636名 |
- 2回目のワクチン接種14日目以降に、AZD1222ワクチンの接種者5,807名中、30名(0.5%)が、発熱、咳、息切れ、味覚嗅覚障害などの症状を伴う症候性のCOVID-19を発症した。コントロールを接種された被験者5,829名からは、101名(1.7%)が症候性のCOVID-19を発症した。
ワクチンの有効率(発症抑制率)は70.4%(95%信頼区間:54.8%-80.6%)であった。 - COV002でワクチンの接種量がLD/SDであったグループ(1,367名)では、ワクチンの有効率は90.0%(95%信頼区間:67.4%-97.0%)であった。
COV002でワクチンの接種量がSD/SDであったグループと、COV003との合計(4,440名)では、ワクチンの有効率は62.1%(95%信頼区間:41.0%-75.7%)であった。
AZD1222 (発症者/接種者) | コントロール (発症者/接種者) | 有効率 | |
COV002 LD/SD | 3名/1367名 (0.2%) | 30名/1374名 (2.2%) | 90.0% |
COV002 SD/SD + COV003 | 27名/4440名 (0.6%) | 71名/4455名 (1.6%) | 62.1% |
合計 | 30名/5,807名 (0.5%) | 101名/5,829名 (1.7%) | 70.4% |
- COV002の被験者のうち、毎週の鼻咽頭拭い液の自己採取や、職場での感染対策として行われた核酸増幅検査によって、69名が陽性となった。
(陽性になった時点で何らかの自覚症状があったかは、把握されていない。)
69名のうち、AZD1222接種者は29名(0.9%)、コントロール接種者は40名(1.2%)であり、無症候または症状不明のCOVID-19感染に対するワクチンの有効率は27.3%(95%信頼区間:-17.2-54.9%)であった。 - サブグループ解析で、ワクチン接種の間隔(6週未満対6週以上)と有効率との関係を解析したが、有意な差は認めなかった。
- 標準量(SD)を1回接種してから21日以上経過後のワクチンの有効率は、64.1%(95%信頼区間:50.5-73.9%)であった。
- 1回目の接種から21日目以降に、10人がCOVID-19で入院し、そのうち2人が重症であり、1名が死亡した。全てコントロールの接種を受けた被験者だった。
- 56歳以上の被験者については、データ解析時点での発症者が少なく、有効率を計算できなかった。
安全性
- 4つの臨床試験で、少なくとも一回のAZD1222を接種された被験者は12,021名、コントロールを接種された被験者は11,724名であった。
- 重篤な有害事象は、AZD1222群で79例、コントロール群で89例に認められた。
(院長注:有害事象は、医薬品投与後に認めた全ての好ましくない現象です。医薬品投与との因果関係は考慮しておらず、自殺や交通事故なども含まれます。) - AZD1222、またはコントロールの接種と関連があると考えられた重篤な有害事象は、3例であった。
コントロールの髄膜炎菌ワクチンとの関連が疑われる溶血性貧血が1例
2回目のAZD1222接種後14日目に報告された、横断性脊髄炎が1例
1回目の接種後2日で認められた、40℃以上の発熱(盲検中であり、AZD1222とコントロールのどちらを接種されたか不明)が1例 - そのほかに、当初はワクチン接種と関連している可能性が高いと報告されていたが、後に神経学の専門家委員会から関連性が薄いと判断された横断性脊髄炎の症例が、2例(AZD1222接種で1例、髄膜炎菌ワクチン接種で1例)認められた。
- AZD1222接種群で1名、コントロール群で3名の死亡が認められたが、ワクチンとの関連はないと判断された。
(交通事故、鈍的外傷、殺人、真菌性肺炎がそれぞれ1名)
ディスカッション(論文著者らの見解)
- 2回の標準量(SD)のAZD1222の接種を受けた被検者において、症候性のCOVID-19を予防する効果(およそ60%強)は、治験が行われた国や投与の間隔の長短に関わらず一貫しており、この結果は一般化可能なものである。
- 今回示したAZD1222ワクチンの有効性は、FDAやWHOが定めたパンデミックウイルスに対して有効なワクチンの基準(有効率50%)を上回るものである。
- これは、ウイルスベクターにより誘導された、スパイクタンパクに対する免疫反応が、疾患からヒトを防御するという最初の報告である。
- 56歳以上の高齢者の試験への組み入れが遅くなったため、今回の解析では高齢者に対するワクチンの有用性を示す充分なデーターが得られなかった。
今後のデーター集積と、追加の解析が待たれる。 - AZD1222ワクチン接種による局所的/全身的な副反応は許容可能なものであり、①高齢、②低用量、③2回目の接種において、頻度、強度とも低下する。(過去に、別の論文として報告した)
- ワクチンによる予防効果がどれだけの期間持続するかについては、今後の検討を必要とする。
- 1回目の投与が低用量(LD)であった群のほうが、AZD1222の有効性が90%と、他の群と比べて高かった事については、偶然が作用した可能性もあるが、興味深い現象である。
小児領域でも、初回のワクチン接種量を減らしたほうがブースター接種後により強い免疫反応が得られるという現象の報告があり、このメカニズムを解明するためにはさらなる研究を必要とする。 - AZD1222が不顕性感染を抑制できるかについては、今回の解析では信頼区間の幅が広く、明らかにできていない。進行中の臨床試験の、さらなるデーターの集積が待たれる。
院長の感想
論文のデーターの解釈
単独の臨床試験のデーターを提示した、ファイザー社のBNT162b2ワクチン(コミナティ注)に関する論文(2021年2月7日のブログ)と比較すると、
①被験者の年齢や性別、社会的背景などに偏りがある。
②ワクチンで最も守られるべき、高齢者や基礎疾患をもつ人のデーターが乏しい。
③ワクチンの接種間隔や、コントロールの内容が試験間で統一されていない。
など、データーの質に関しては、正直見劣りする内容の論文です。
きっと、現在も進行中のそれぞれの臨床試験(特にCOV002とCOV003)のデーターの集積と解析がもっと進めば、よりクオリティの高い解析結果が報告されるのでしょうが、COVID-19のパンデミックがあまりに深刻だったため、とにかく当局からの承認を得られるだけの有効性を早く示そうという、やむにやまれぬ社会的背景のために提示された解析結果なのだと思われます。
この解析結果から示された、AZD1222ワクチンの発症予防に関する有効率は70.4%と、ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンの90%台と比較すると低い数値になっていますが、
①全体に発症者の数が少ないため、偶然による数人の発症者の増減で有効率が大きく変わりうること。(95%信頼区間も54.8-80.6%と大きい)
②COVID-19の診断基準が、各社の試験で異なっていること。
を考慮すると、この報告だけでアストラゼネカ社のワクチンが、他2社と比べて効果で劣るとは言い切れないと思います。
さしあたっては、WHOの基準を満たす有効なワクチンであることが確認されたというところまでの解釈で良いのではないでしょうか。
AZD1222ワクチンによる局所/全身の副反応
この論文では、AZD1222ワクチンの安全性に関しては、重篤な有害事象に関する記載のみで、ワクチン接種後に最も起こりやすく、接種を受ける方が気にされるであろう、痛み、倦怠感、発熱などの副反応に関するデーターが示されていませんでした。
これらについては、COV001試験の中間報告としてLancet誌に別の論文がありましたので、そちらを引用してみたいと思います。
予防として解熱鎮痛薬を服用していた場合と、していなかった場合の数値が記載されていますが、服用していなかった場合の数値をお示しします。
論文の全文は下のリンクよりご覧いただけます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7445431/
副反応の種類 | 軽症・中等症(%) | 重症(%) |
局所の自発痛 | 67 | 1 |
局所の圧痛 | 82 | 1 |
局所の発赤 | 2 | 0 |
局所の腫れ | 4 | 0 |
発熱(38℃以上) | 16 | 2 |
寒気 | 48 | 8 |
関節痛 | 30 | 1 |
筋肉痛 | 56 | 4 |
疲労感 | 64 | 6 |
頭痛 | 62 | 6 |
吐気 | 24 | 2 |
全体として、ファイザー社のBNT162b2ワクチンとほぼ同程度という印象を受けます。
注射部位の痛みや頭痛、筋肉痛、発熱などが起こりやすいのは、スパイクタンパクの抗原性が非常に高いためで、スパイクタンパクを標的抗原にしたワクチンでは、短期間での副反応はどれも似たような結果になるのではないでしょうか。
AZD1222ワクチンの強み
AZD1222ワクチンの最大の強みは、その取り扱いやすさと、コストパフォーマンスの良さでしょう。
AZD1222ワクチンのベクターとして用いられたアデノウイルスは、安定性の高い二重鎖DNAに遺伝情報を保持しています。
このウイルスにコロナのスパイクタンパクの遺伝情報を組み込んだため、AZD1222ワクチンはインフルエンザワクチンと同様、通常の冷蔵庫(2℃-8℃)で保管が可能です。
これは、-70℃での保管が必要なファイザー社のワクチンや、-20℃での保管が必要なモデルナ社のワクチンと比べて、大きなアドバンテージです。
また、AZD1222ワクチンの米国での契約価格は1接種あたり約4ドルと報道されており、19.5ドルと報道されたファイザー社、20-30ドルと報道されたモデルナ社と比較して、およそ5分の1以下という安価さです。
ワクチンの購入に巨額の資金を捻出することが出来ず、超低温での保管や輸送が困難な多くの国や地域にとっては、AZD1222ワクチンは非常に有望な選択肢となることでしょう。
高齢者での有効性の問題
2月下旬現在、日本でも承認に向けて審査が行われているAZD1222ワクチンですが、この論文で高齢者に対する有効性を明確に示せなかった点が、厚労省の審査結果に影響を与える可能性が考えられます。
欧州医薬品庁(EMA)や、世界保健機関(WHO)は、「高齢者でも若年者と同様の免疫反応が誘導されるため、予防効果が期待できる。」として、高齢者にもAZD1222ワクチンの接種を推奨していますが、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデンなどの各国は、独自の判断で接種対象を若年者に限るよう勧告しています。
厚労省がエビデンスを重視して、若年者への接種しか認めない形で承認するとしたら、4月以降に予定されているおよそ3600万人の高齢者への優先接種にはAZD1222ワクチンを使用できず、全てファイザー社のBNT162b2ワクチンを使用することになります。
世界中でワクチン争奪戦の様相を示している現状で、短期間に大量のBNT162b2ワクチンを調達できるのかは不透明であり、厚労省としてはAZD1222ワクチンも併用したいところでしょう。
しかし、エビデンスが不充分なまま高齢者にも接種を認めて、もし充分な効果が得られない結果になれば、政府や厚労省は猛烈な批判を受けることになるでしょう。
はたして、厚生労働省はどのような判断を下すことでしょう?
あるいは、近日中にアストラゼネカ社から追加の解析結果が示されて、高齢者にも有効であるというエビデンスが示されるでしょうか?
今後の動向を注視したいと思います。
変異株に対する予防効果
現在、世界各地で新型コロナウイルスの変異株が報告されています。
代表的なものは、①イギリス変異株(VOC-202012/01)、②南アフリカ変異株(501Y.V2)、③ブラジル変異株(501Y.V3)の3種類ですが、それぞれスパイクタンパクに複数の変異が生じており、感染力や抗原性が従来のコロナウイルス(野生株)と異なっています。
これらの変異株に対するAZD1222ワクチンの有効性ですが、2月上旬までの限定的なデーターでは、
①イギリス変異株に対しては、野生株と同程度に有効(オックスフォード大学の報告)
②南アフリカ変異株に対しては、軽症から中等症での予防効果が乏しく、重症化については検証できず。(ウィットウォーターズランド大学の報告)
③ブラジル変異株に対しては、未検証
となっています。
このため、南アフリカ変異株が発症者の大多数を占める南アフリカ共和国では、AZD1222ワクチンの接種を中止して、既に確保した100万回分を海外へ売却する方向で調整しているそうです。
アストラゼネカ社とオックスフォード大学は、南アフリカ変異株に対して有効な改良ワクチンを年内に開発するとアナウンスしていますが、ウイルスベクターワクチンは、ベクターとして使ったウイルス(AZD1222の場合チンパンジーのアデノウイルス)に対する抗体が体内に形成されてしまうため、同じベクターを使用したワクチンを繰り返し投与しても効果が得られにくいと考えられています。
改良ワクチンでは、既にAZD1222ワクチンを投与した人でも効果が得られるように、別のベクターウイルスを採用するのでしょうか?
興味を持って続報を待ちたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2021年5月21日追記
本日、アストラゼネカ社製AZD1222ワクチンが、厚生労働省に特例承認されました。
バキスゼブリア筋注(独立行政法人医薬品医療機器総合機構=PMDAのページ)
国内で安全性評価のために4週間間隔の2回接種を192人(2回目は176人)に行ったところ、以下のような有害事象になったようです。
有害事象 | 1回目接種後 | 2回目接種後 |
注射部位疼痛 | 52% | 23% |
筋肉痛 | 35% | 17% |
倦怠感 | 35% | 11% |
頭痛 | 25% | 10% |
発熱 | 10% | 2% |
ファイザー社ワクチン(BNT162b2)に比べると副反応がややマイルドなのと、1回目接種のほうが副反応が強めで、2回目接種のほうが軽めなのが印象的です。
(2回目接種は人数が16人減ってしまっているので、強い副反応が出た人は1回で脱落しているのかもしれません)
また、添付文書には最大の効果を得るために8週間以上の間隔をあけることが望ましいと記載されていますが、この国内試験では4週間間隔で接種されています。
このため、最大の免疫反応がおこらずに副反応を軽めに見積もっている可能性がある点にも注意する必要がありそうです。
なお、このワクチンはごくまれな副反応として起こりうる血栓症への懸念を考慮して、当面は公的接種(国が費用負担する集団接種/個別接種)には用いられないそうです。
モデルナとアストラ製ワクチン承認へ ア製は使い道未定(朝日新聞)