ファイザー社ワクチンの3回目(ブースター)接種での予防効果

はじめに

2021年10月初旬現在、日本中で猛威を奮っていたデルタ株による第5波の感染は下降曲線にあり、政府は19都道府県に発出していた緊急事態宣言ならびに蔓延防止措置を、9月末ですべて解除しました。
観光地には、長い自粛生活での鬱憤を晴らすかのように、多くの人出が見られているようです。

緊急事態宣言解除後 初の週末 観光地には家族連れ(NHKニュース)

デルタ株による爆発的な感染拡大が、8月下旬を境になぜ急激に減少に転じたのか、院長には原因がよくわかりませんでした。
専門家の間でもはっきりした見解はないようです。

「宣言解除は妥当」…でも感染急減の理由は「分からないことだらけ」(東京新聞Web)

ワクチン接種率の向上が効果を現したのか、あるいは感染拡大に伴って盛り場などに足を運ぶ人の数が減ったせいなのか・・・
後者が主な要因だとすれば、行動の緩和による人流の増加は、第6波の到来を早めてしまう可能性が考えられます。
前者が主な要因だとすれば、今後もさらにワクチン接種を促進して、まだワクチン接種を受けられていない若い世代をカバーすることで、第6波の到来を遅らせるか、または波の高さを低くすることができるかもしれません。

日本国内のワクチン接種率は6月以降急激に上昇し、9月30日時点では1回目接種終了が70.4%、2回目接種終了が59.8%と、欧米諸国と比べても遜色ないレベルに達していますが、3-5月頃に優先接種を受けた医療関係者や高齢者は、そろそろ接種から半年前後経過しており、ウイルスに対する中和抗体が減少し始めているものと思われます。
年末ころまでに若い世代への接種を完了したら、休む間もなく医療関係者や高齢者への3回目(ブースター)接種が開始されるかもしれません。

ワクチン3回目接種を行う方針 対象は2回目から8か月以上で検討(NHK首都圏ナビ)

せっかくワクチン接種が終わったと思ったら、もう3回目の話かとうんざりされる方は多いかと思います。
また、2回目までの接種の副反応で辛い思いをされた方は、3回目を接種したら一体どうなってしまうことかと、不安に思われることでしょう。
ブースター接種によりどのような効果が期待でき、どの程度の副反応が生じるのか、十分な情報を集めた上で、利益と不利益を天秤にかけて慎重に判断しなければなりません。

今年の1月-2月に国を挙げて大規模なワクチン接種キャンペーンが行われたイスラエルでは、ワクチンの効果で一旦は感染者数が大幅に減少しましたが、デルタ株の流行に伴って感染の再拡大が起こり、8月から世界に先駆けてブースター接種を開始しました。
9月15日付けの The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE誌のオンライン版に、このブースター接種の効果を報告した論文が掲載されましたので、今回はこの論文の内容を読み解いてみたいと思います。

原文(英語)や図表は、下のリンクからお読みいただけます
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2114255

※じっくり目を通すお時間がない方は、重要と思われる箇所を赤文字にしましたので、拾い読みなさってください。

試験デザイン

  • ファイザーワクチンの2回目接種から5ヶ月以上経過した、60歳以上のイスラエル国民、113万7,804人を解析対象とした。
  • ブースター接種が開始となった2021年7月30日より、8月31日までの新型コロナウイルスの新規感染確認を、ブースター接種を行った人(接種群)と行わなかった人(非接種群)とで比較した。
  • 多くの人は観察期間中にブースター接種を受けたため、接種を受けた時点で非接種群から接種群に移動した。
    両群の比較は、人数✕その群に属していた日数(人日)で行った。
  • 新型コロナウイルス感染症の重症化については、7月30日より8月26日までのデーターで、接種群と非接種群を比較した。
  • 接種群の中で、接種から4-6日目と、12日目以降の感染確認についても比較を行った。

試験結果

  • 非接種群と比較して、接種群は男性の比率が高く、より高年齢で、より早い時期(2021年1月下旬)にワクチン接種を終えた人が多かった。
  • 非接種群では、520万人日において4,439例の感染が確認され、460万人日において294例の重症化が認められた。
  • 接種群では、1060万人日において934例の感染が確認され、630万人日において29例の重症化が認められた。
  • 2群間の背景因子の差を統計学的に補正して、ブースター接種の予防効果を計算したところ、感染確認については非接種の11.3倍(95%信頼区間:10.4-12.3倍)、重症化予防については非接種の19.5倍(95%信頼区間:12.9-29.5倍)の予防効果と算出された。
  • ブースター接種は、感染確認については10万人日あたり86.6例、重症化については10万人日あたり7.5例をそれぞれ減少させると算出された。
  • ブースター接種後4-6日目と比較して、12日目以降の感染確認に関する予防効果は5.4倍であった。

論文著者らの見解

  • ファイザーワクチンによるデルタ株への発症予防効果は、接種後半年を経過するとおよそ50%程度に低下する。
  • ブースター接種は、2回接種直後と同程度の95%近くまで、ワクチンによる発症予防効果を引き上げるものと思われる。
  • 今回の結果を受けて、イスラエルはブースター接種の対象を、60歳以上から全年代に拡大した。
  • ブースター接種はデルタ株に対しても有効であることが、今回の研究で明らかとなった。
  • ブースター接種の効果の持続期間については、今後の研究で明らかになるであろう。

院長の感想

今回の論文によれば、ブースター接種で得られる予防効果は、2回目接種後とほぼ同等のようです。
敵(ウイルス)が来ないことで警戒態勢を緩めつつある免疫システムに、敵の影をちらつかせることで、もう一度臨戦態勢に戻るよう促しているわけですね。

ブースター接種の効果の持続期間はまだデーターが存在しませんが、おそらく2回目接種と同じ半年前後なのではないでしょうか?
人体は、新型コロナウイルス以外にも無数の病原体の脅威に常にさらされており、毎日それらと戦わなければなりません。
いつ到来するか分からない脅威に、いつまでもリソースを割いて厳戒態勢を取り続けることは、生物として不合理なことなのでしょう。

今回の論文には、ブースター接種の副反応に関する記載はありませんでしたが、アメリカでのブースター接種の承認にあたり、ファイザー社が9月17日に米国食品医薬品局(FDA)に提出した資料では、以下のような数値が報告されています。(原文のpdfファイル)

副反応18-55歳(289人)65-85歳(12人)
接種部位の痛み83.0%66.7%
接種部位の腫れ8.0%0.0%
接種部位の発赤5.9%0.0%
倦怠感63.8%41.7%
頭痛48.4%41.7%
筋肉痛39.1%33.3%
悪寒29.1%16.7%
関節痛25.3%16.7%
下痢8.7%0.0%
嘔吐1.7%0.0%
発熱
(>38℃)
8.7%0.0%
解熱剤使用率46.7%33.3%
ブースター接種の副反応

高齢者に関しては人数が少なすぎてあまり信頼性の高い数値とはいえませんが、18-55歳の副反応に関しては、2回め接種とほぼ同程度のようです。
また、因果関係が認定された重篤な副反応は、報告されていないとのことです。
接種を繰り返すほど副反応がひどくなるわけではなさそうなのは、せめてもの明るい材料でしょうか?

医療者の身としては、ブースター接種が必要とあれば接種を受けることに否やはありませんが、できればあと1-2回くらいで終わりになって欲しいとは切に願っております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。